「失われた古代文明」2025・5・30
★「失われた古代文明」(フィリップ・マティザック著)を読みました。紀元前2800年から紀元450年まで、古代の中東、地中海、ヨーロッパに住んでいた民族のうち、歴史上から消えた40の民族を取り上げた本です。
★私が知っているのは、アッカド人、ヒッタイト人、ドーリア人、ゴート人、カルデア人、サマリア人ぐらいです。知っていると言っても名前を見たことがある程度です。
★本書が取り上げている地域は、地中海を中心にした周辺諸国です。現在の国名でいえば、ギリシャ、イタリア、トルコ、エジプト、ウクライナ、イスラエル、イランなどです。紀元前2800年には、これらのほとんどの国はありませんでした。無名の少数民族が小競り合いを続け、略奪、殺戮、侵略を繰り返し、支配地域を広げていました。
★消えた40の民族は、支配地域に独自の文明をもたらしました。しかし、青銅器時代の混乱期を経て、鉄器時代になると、新技術をいちはやく取り入れた民族が軍備を近代化し、周辺地域を次々に征服、巨大帝国を作り上げていきました。ギリシャ・ローマ時代です。
★この過程で有力な40の民族が消え去りました。人類の歴史は殺戮の歴史です。この地域では現在も戦争が続いています。イスラエルのネタニヤフ首相はパレスチナ人を目の敵にし、皆殺しにするまで戦争はやめないと宣言しています。
★パレスチナ人の先祖は「海の民族」ペルシテ人と言われています。素性不明・謎の民族です。ペルシテ人は、故郷を離れ前11世紀にイスラエルのカナンに侵攻、ガザ、アシュケロン、アシュドット、ガド、エクロンに都市を作り、領土の拡大に乗り出します。人種はアラブ人です。
★イスラエルの先住民は、紀元前2000年に定住していたヘブライ人です。人種はユダヤ人です。旧約聖書によれば、ヘブライ人は前14世紀、イスラエルを離れ、エジプトに移住します。その後、エジプトで迫害を受け、預言者モーゼに率いられエジプトを脱出、「約束の地」イスラエルに帰還します。ここまでは旧約聖書の話です。
★第2次大戦後、国連はパレスチナにユダヤ人国家「イスラエル国」を作ることを認めます。
1000年以上この地に定住していたパレスチナ人(アラブ人)は、これは不当だと反発、中東戦争を経て、今日に至っています。
★ネタニヤフ首相は、旧約聖書や国連の決定を根拠にイスラエルは自分たちの領土で、パレスチナ人(アラブ人)は、侵入者であり、この地から出ていくのが当然と主張しています。
★前1200年、ペルシテ人がイスラエルに侵攻した時から、パレスチナ人(ペルシテ人)はイスラエルの怨念の敵になりました。3000年にも及ぶ因縁の戦いです。先祖も同じことをやっていました。
★この時代の覇者はローマ帝国です。ローマは紀元前753年建国、前509年共和制を経て、前27年ローマ帝国成立、西暦476年滅亡までおよそ1200年続いた大帝国です。紀元前6世紀、イタリア半島を統一したローマは、西地中海に進出、カルタゴとの激戦の末、東地中海を制定、地中海世界最大の強国になります。最盛期は現在のイタリアを中心に、ヨーロッパ、アフリカ、アジアにまたがる広大な領土を支配していました。
★古代ローマは、先住民族ケルト系民族を追放して、王政ローマを樹立したラテン人、サビニ人、エトルリア人です。長い歴史の中、内乱、外敵の侵入など栄枯盛衰がありました。いろいろな民族との混交があり、混血が進みました。古代のイタリア半島には、北部にガリア人、トスカーナにエトルリア人、南部にギリシャ人が分布していました。
★古代末期(375年)にゲルマン民族の大移動があり、ローマ帝国にも侵攻し、各地で戦闘が起きました。西暦395年、ゴート人(ゲルマン人)との戦闘に敗れ、ローマ帝国は東西に分裂、東はビザンチン帝国として1000年存続しましたが、西ローマ帝国は滅亡しました。
★消えた民族は地中海周辺で40ですが、実際にはもっと多かったでしょう。これを地球規模に広げれば、膨大な数になるでしょう。わが国でも戦国時代、敵対する大名は一族郎党、血筋を絶やすまで情け容赦のない戦をしました。中国、韓国も同様です。中国では今でもウイグル族の殲滅を図っています。
★人類は5万年前に発生しました。本書はわずか3000年の話です。人類の歴史に鑑みれば、一瞬の出来事です。人間はおろかですね。
★本書は古代の地中海周辺の物語です。アジアの民族には触れていません。ローマ帝国の版図が広大だったことは説明しました。チンギス・ハンが築いたモンゴル帝国は、中国、中央アジア、イラン、東ヨーロッパにおよび、当時の世界人口の半分以上を統治、人類史上最大規模の世界帝国でした。さぞかし多くの民族が滅びたことでしょう。
                                         完

  
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