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最近思うこと
 ★「ボクいくつ?」と聞くと「3ッチュ!」と指を3本立てて答えてくれる。母親が今年3歳になりました、と口添えをする。
★ある会合で、初対面の人に「失礼ですが、おいくつですか」と尋ねると、「75歳です」という。「とてもそんなお歳には見えません、お若いですね」と応じる。
★高齢者が運転免許証を更新するには「認知機能検査」を受けなければならない。先ず初めに「今日は何年何月何日で、今は何時ですか」との質問がある。続いて白紙に、時計の文字盤を描くようにといわれる。教官から10時25分を書きなさい、と指示がある。
★朝4時に目覚しをセットし起床する。4時半から約1時間ウオーキングに出掛ける。週休二日制で土・日は休み。週5日なので、月間20日(5×4)、年間では240日(20×12)歩いていることになる。距離は往復約4kmなので、年間960km(4×240)となる。何と東京から九州までの距離だ。
★朝の血圧を測定する。130と65だった。歯を磨き、洗面し、髭を剃って、6時半に朝食を摂る。7時にNHKのニュースを見る。トップはオミクロン(ギリシャ文字の15番目)の感染者が2人出たとのニュース、続いて新年度の予算が106兆円になったという、気象情報では、今朝の最低気温は6℃で、日中は15℃になるとのこと。

★日大の田中理事長が脱税の容疑で逮捕された。自宅から1億円を超す現金が見つかった。奥さんの手元にも1億円の現金があった。
★コロナ禍の経済対策として、18歳以下の子どもに1人10万円を支給することが決まった。5万円は現金で、5万円はクーポンだ。このクーポン券を配る事務経費が967億円掛ることが判明、野党は制度設計が杜撰だと追及している。

★先日、町内の忘年会をやった。参加者は去年とほぼ同じ30人位集まった。幹事に今日は何人と聞くと27人だといった。
★定期健診でかかりつけのクリニックに行く。次回は12月20日ですが、ご都合はいかがですか、と聞かれる。手帳を見て、この日は予定があるので、翌日にしてください、と返事する。それでOKとのことで決定する。帰宅して忘れないように、壁掛けのカレンダーに印を付け、メモっておく。カレンダーは左から右に、1,2,3と並んでいる。左端は日曜日で赤い文字になっている。
★今年のノーベル物理学賞に、気象変動シミュレーションの真鍋淑郎氏が選ばれた。気象変動という自然現象を、コンピューターを使って解析した。難解な数式が板書されている映像が放映された。
★ここに挙げた事例は、私の身の回りに起きた最近の出来ごとです。何の変哲もないごく普通のことばかりです。お気づきになったと思いますが、この事例に共通しているのは“数”です。この数について、なぜそうなのか、とは思い付きません。

★例えば、3歳児が3つと指を立てて答えられるのは、親から教えられたからではなく、人間の生得的現象だと「数の発明」の著者ケイレブ・エヴェレットはいう。指を3つ立てることは、人間が数を数える源になった手の指から来ています。世界には10進法、20進法、5進法などの他に、2進法、3進法、4進法、6進法などがありますが、10進法がもっとも普及している。これは指からきています。
★上に挙げた例にも時計(12進法)、時間(60進法)、カレンダー(30進法)が出てきます。神経生理学によって数を把握する構造が明らかになってきました。1,2,3など少ない数は、生まれながらに素早く認識出来ますが、それ以上は漠然と、多いということしか認識できません。著者はそれを数の「きっちり感覚」と「ざっくり感覚」といっています。
★つまり、正確に捉えられるのは3までで、それ以上はアバウトということです。忘年会の参加者を約30人といいましたが、これは見た感じで言ったまでで、正確には数えなければ真の数は分かりません。100万円はある程度実感できますが、1億円や106兆円は桁が大き過ぎて実感は湧きません。著者のいう「数のざっくり感覚」です。
★人間が大きな数を把握出来るようになるのは、教育によってです。掛け算(ウオーキングの例)は学習で習得したものです。数を持たない民族(アマゾンの先住民)は、3までの数しか認識出来ません。知能が劣っているのではなく、数がなくても生活に支障がないからです。数は生活環境と文化に応じ発展してきました。真鍋先生の物理学は「数学」の文化の中で後天的に習得したものです。

★これらの数は、いつ、誰が、何を基に発生したのか。これが「数の発明」のテーマです。著者は人類学・言語学が専門ですが、この本には言語人類学、認知心理学、考古学、大脳生理学、動物行動学の知見が網羅され、数という概念がどのように人類によって発明されたかを探究しています。
★ヒトは母親の胎内にいる頃から、手の指を動かし、1,2,3までの数を認識するという。幼児が3ッチュと答えられるのは、先天的という。数の始まりが手の指からというのは、説得力があります。

★時計が24時間になったのは、3千年前、古代エジプト人が始めた日時計が元になっている。元々は10進法だったが、曙と黄昏を加えて12時間になったという、天文学が根拠と思っていたがそうではなかった。これは本書で知ったことです。
★来年は西暦2022年です。2022年とは2,0,2,2の数字が左から右に並んでいるだけです。これはわれわれ現代人には何の違和感もないことです。しかし、5世紀にインドでゼロ(0)が発明されなければ、このような表記は出来ません。古代ギリシャ、ローマではゼロがなかったので、数字は1から9まででした。
★古代ローマ人やギリシャ人を含め、ヨーロッパの人々はゼロ記号なしでも数学を洗練させました。巨大文明を成り立たせるのに、ゼロ記号は必ずしも必須の要素ではありませんでした。とはいえ、産業革命や技術革新がゼロ記号なしで起こったかといえば、それを想像するのは難しい、と著者は述べています。
★数を発明したのは誰なのかは分かりません。17万年前の洞窟からその痕跡が発見されています。われわれの祖先がアフリカを出発したのが、6万年前ですから、それよりはるか前に、人類は数を認識していたことになります。数は人間の知能の産物です。わたしたちが量というものをどのように見て、どのように見比べるかを決定的に変えてしまった認知の発明品です。
★本書には、記号としての数の他、話し言葉の数、書き言葉の数詞についても解説があります。またエジプトのピラミッド、カンボジアのアンコール・トム、インカ帝国と数の関係など、知的好奇心を掻き立てる話題が満載です。詳しくは本書をお読みください。
           数の認知(2021・12・10)
   2021年後半投稿一覧
 投稿日    タイトル
 12月10日 数の認知 
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